
IU(国際単位)とは何か#
サプリメントのラベルや医療機関の処方箋を見ると、IUという単位を目にする機会が多いのではないでしょうか。IUは**International Unit(国際単位)の略で、ビタミンやホルモンなどの生物学的活性(体内での作用の強さ)**を測定する単位です。
一方、mcg(マイクログラム)やmg(ミリグラム)は重量を表す単位です。mcgは1グラムの100万分の1(0.000001 g)、mgは1グラムの1,000分の1(0.001 g)に相当します。
ここで重要なのは、IUは物質ごとに異なる換算係数を持つという点です。1 IUのビタミンDと1 IUのビタミンAでは、実際の重量がまったく異なります。同じビタミンAでも、レチノールとβカロテンでは換算係数が異なります。さらにビタミンEは、天然型(d-α-トコフェロール)と合成型(dl-α-トコフェロール)で換算係数が異なります。
このガイドでは、日本で販売されているサプリメントに関連する主要なビタミンについて、IU・mcg・mgの換算方法を一覧表とともにわかりやすく解説します。
IUが生まれた歴史的背景#
IU(国際単位)のシステムは、1931年に国際連盟の保健機関(現在のWHOの前身)によって制定されました。当時の科学技術では、微量のビタミンを正確に計量することが困難だったため、「ラットの病気(くる病など)を予防するのに必要な量」という生物学的な定義に基づいて単位が設定されました。
現在では分析化学の進歩により重量での測定が可能になりましたが、IUが根強く使われ続けている理由があります。それは、同じビタミンでも化学形態によって体内での活性が異なるからです。例えば、天然ビタミンEは合成ビタミンEの約1.5倍の生物学的活性を持ちます。IUを使えば、形態の違いに関わらず「体内での効果の強さ」を直接比較できるのです。
FDAのラベル表示変更#
米国FDA(食品医薬品局)は2016年にサプリメント表示規則を改定し、ビタミンA・D・Eについてmcgまたはmgを主要単位として表示することを義務付けました。現在、多くのサプリメントには「ビタミンD3 — 50 mcg(2,000 IU)」のように両方の単位が併記されています。日本のサプリメントでもこの傾向が広まりつつあります。
ビタミンD3(コレカルシフェロール)の換算#
ビタミンD3は最も頻繁にIU⇔mcg換算が必要になる栄養素です。
換算係数#
1 IU = 0.025 μg(mcg)
1 μg(mcg)= 40 IU
計算方法#
- IUからmcgへ: IU × 0.025 = mcg
- mcgからIUへ: mcg × 40 = IU
ビタミンD3 換算一覧表#
| IU | μg(mcg) | 主な用途 |
|---|---|---|
| 200 IU | 5 μg | 一部の食品に含まれる量 |
| 340 IU | 8.5 μg | 厚生労働省の成人目安量 |
| 400 IU | 10 μg | 乳幼児の推奨量、基本的なサプリメント |
| 1,000 IU | 25 μg | 一般的な日常維持量 |
| 2,000 IU | 50 μg | 人気のあるサプリメント用量 |
| 4,000 IU | 100 μg | 厚生労働省の耐容上限量 |
| 5,000 IU | 125 μg | 高用量サプリメント(上限超) |
| 10,000 IU | 250 μg | 治療用量(医師の監督下) |
| 50,000 IU | 1,250 μg | 週1回処方の治療用量 |
ビタミンDの効果と摂取量についてはビタミンD 効果と摂取量ガイドをご参照ください。
ビタミンA(レチノール)の換算#
ビタミンA(レチノール)はIUとμg RAE(レチノール活性当量)の換算が必要です。
換算係数#
レチノール:1 IU = 0.3 μg RAE
1 μg RAE = 3.33 IU
計算方法#
- IUからμg RAEへ: IU × 0.3 = μg RAE
- μg RAEからIUへ: μg RAE × 3.33 = IU
ビタミンA(レチノール)換算一覧表#
| IU | μg RAE | 主な用途 |
|---|---|---|
| 1,000 IU | 300 μg | 低用量サプリメント |
| 1,500 IU | 450 μg | 小児用サプリメント |
| 2,000 IU | 600 μg | 中用量サプリメント |
| 2,333 IU | 700 μg | 厚生労働省の成人男性推奨量 |
| 5,000 IU | 1,500 μg | 標準的なマルチビタミンの含有量 |
| 9,000 IU | 2,700 μg | 厚生労働省の耐容上限量 |
| 10,000 IU | 3,000 μg | NIH(米国)の耐容上限量 |
ビタミンAの過剰摂取リスクについてはビタミンAの過剰摂取リスクをご参照ください。
ビタミンA(βカロテン)の換算#
βカロテンはレチノールとは異なる換算係数を持ちます。体内でのレチノールへの変換効率が低いためです。
換算係数(サプリメント由来のβカロテン)#
1 IU = 0.6 μg βカロテン
1 μg βカロテン = 1.67 IU
RAEへの変換#
βカロテンからRAEへの換算は以下の通りです。
- サプリメント由来: βカロテン 12 μg = 1 μg RAE
- 食品由来: βカロテン 12 μg = 1 μg RAE(ただし吸収率の違いを考慮して、従来は24 μgとされることも)
βカロテン換算一覧表#
| IU | βカロテン | μg RAE相当 |
|---|---|---|
| 1,000 IU | 600 μg | 50 μg RAE |
| 5,000 IU | 3,000 μg(3 mg) | 250 μg RAE |
| 10,000 IU | 6,000 μg(6 mg) | 500 μg RAE |
| 25,000 IU | 15,000 μg(15 mg) | 1,250 μg RAE |
βカロテンとレチノールの違いについてはレチノールとβカロテンの違いをご参照ください。
ビタミンE(α-トコフェロール)の換算#
ビタミンEの換算は、天然型と合成型で換算係数が異なるため、特に注意が必要です。
天然ビタミンE(d-α-トコフェロール)#
1 IU = 0.67 mg d-α-トコフェロール
1 mg d-α-トコフェロール = 1.49 IU
合成ビタミンE(dl-α-トコフェロール)#
1 IU = 0.45 mg dl-α-トコフェロール
1 mg dl-α-トコフェロール = 2.22 IU
天然型は合成型の約1.5倍の生物学的活性を持つため、同じIU数でも天然型の方が重量(mg)が大きくなります。サプリメントの成分表示で「d-α-トコフェロール」と「dl-α-トコフェロール」を確認することが重要です。
ビタミンE 換算一覧表#
| IU | 天然型(d-α) | 合成型(dl-α) |
|---|---|---|
| 30 IU | 20.1 mg | 13.5 mg |
| 100 IU | 67 mg | 45 mg |
| 200 IU | 134 mg | 90 mg |
| 400 IU | 268 mg | 180 mg |
| 1,000 IU | 670 mg | 450 mg |
厚生労働省の成人男性のビタミンE目安量は6.0 mg/日、耐容上限量は800 mg/日(α-トコフェロールとして)です。
ビタミンEの効果についてはビタミンEの効果と食べ物、400 IUの詳細についてはトコフェロール ビタミンE 400IUをご参照ください。
全ビタミン換算係数まとめ#
以下に、主要なビタミンの換算係数を一覧表にまとめます。
| ビタミン | 形態 | 1 IU = | 逆換算 |
|---|---|---|---|
| ビタミンD3 | コレカルシフェロール | 0.025 μg | 1 μg = 40 IU |
| ビタミンA | レチノール | 0.3 μg RAE | 1 μg RAE = 3.33 IU |
| ビタミンA | βカロテン(サプリ) | 0.6 μg | 1 μg = 1.67 IU |
| ビタミンE | 天然(d-α-トコフェロール) | 0.67 mg | 1 mg = 1.49 IU |
| ビタミンE | 合成(dl-α-トコフェロール) | 0.45 mg | 1 mg = 2.22 IU |
重要: IUの換算は物質ごとに固有です。ある物質の換算係数を別の物質に適用すると、重大な投与量の誤りにつながる可能性があります。必ず正しい物質の換算係数を使用してください。
日本のサプリメントでよく見る用量#
日本で市販されている代表的なサプリメントの用量と換算値を紹介します。
ビタミンD3サプリメント#
| 製品表示 | IU | μg |
|---|---|---|
| 「ビタミンD 25μg」 | 1,000 IU | 25 μg |
| 「ビタミンD 50μg」 | 2,000 IU | 50 μg |
| 「ビタミンD 125μg」 | 5,000 IU | 125 μg |
マルチビタミンのビタミンA#
| 製品表示 | 備考 |
|---|---|
| 「ビタミンA 770μg」 | 推奨量相当。レチノール+βカロテンの組み合わせが多い |
| 「ビタミンA 300μg + βカロテン 5,400μg」 | レチノールは控えめ、βカロテンで補完 |
ビタミンEサプリメント#
| 製品表示 | 備考 |
|---|---|
| 「ビタミンE 150mg」 | 天然型なら約224 IU |
| 「ビタミンE 268mg」 | 天然型で約400 IU相当 |
サプリメントラベルの読み方#
日本で販売されているサプリメントのラベルを正確に読み取るための手順を紹介します。
手順1:ビタミンの化学形態を確認する#
「ビタミンA」だけでなく、「レチノール」なのか「βカロテン」なのかを確認します。「ビタミンE」の場合は「d-α-トコフェロール」(天然型)か「dl-α-トコフェロール」(合成型)かを確認します。
手順2:主要単位を確認する#
近年の製品はμgやmgが主要単位として表示されていることが多くなっています。IUが併記されている場合は、換算が正しいか検算できます。
手順3:検算する#
例:ラベルに「ビタミンD3 — 50 μg(2,000 IU)」と表示されている場合
- 2,000 IU × 0.025 = 50 μg → 正しい
手順4:耐容上限量と比較する#
摂取量が厚生労働省の耐容上限量を超えていないか確認します。複数のサプリメントを併用している場合は、合計量を計算してください。
よくある質問#
IU と mcg は同じですか?#
いいえ、まったく異なる単位です。 IUは生物学的活性を測定する単位で、mcg(マイクログラム)は重量を測定する単位です。例えば、ビタミンD3の1,000 IUは25 mcgに相当しますが、ビタミンA(レチノール)の1,000 IUは300 mcg RAEに相当します。物質によって換算係数が異なるため、単純に同一視することはできません。
なぜ日本のサプリメントにはまだIUが使われているのですか?#
日本では法的にIUの使用が義務付けられているわけではありませんが、国際的な慣習と医療分野での長年の使用により、IUが根強く残っています。厚生労働省の食事摂取基準ではμgを使用していますが、多くのサプリメントメーカーはグローバル製品との整合性やユーザーの馴染みを考慮して、IUを併記しています。
ビタミンEの天然型と合成型はどう見分けますか?#
成分表示の表記で見分けられます。天然型は**「d-α-トコフェロール」、合成型は「dl-α-トコフェロール」**と表示されます。「d-」は天然由来、「dl-」は合成を意味します。天然型は合成型の約1.5倍の生物学的活性があるため、同じIU数でも天然型の方が重量(mg)が大きくなります。
換算を間違えるとどうなりますか?#
最悪の場合、意図した量の数十倍を摂取してしまう可能性があります。例えば、IUとmcgを取り違えてビタミンD3を1,000 mcg(40,000 IU)摂取してしまうと、耐容上限量の10倍に達し、ビタミンD過剰症のリスクがあります。換算は必ず正しい係数を使って行ってください。
出典: